書評 1日ひとつだけ、強くなる 梅原大吾【2015】
数いるゲーマーの中で勝ち続け、プロゲーマーとして生計を立てているということは、尋常なことではない。
そんな勝ち続けることができる梅原氏はどのような考え方をしているのだろうか。
ウメハラ氏はあまり感情を表に出さないように見える。
普通、世界大会で優勝したら声を上げてガッツポーズくらいしてもいいと思うが、軽く微笑む程度だったりする。
そういったところに、彼の勝ち続ける極意があるのでは?と感じ、ポチらずにいられなくなった。
まず、ウメハラって誰だよっていう方のために簡単にご紹介します。
著者
梅原大吾
主にストリートファイターを得意としている。
通称「ウメハラ」「The Beast」
1981年生まれ、日本初のプロゲーマー(ギネス認定)
14歳の時点で国内最強になり、17歳で世界大会優勝。
今まで数々の格闘ゲームのイベントで優勝してきている猛者だ。
僕は、ゲーマーではないが、ストリートファイターにハマった時期があったので、ウメハラ氏のことは知っていた。
一度でもやったことがある方は、YOUTUBEで
「ウメハラの奇跡」
【米付き】ウメハラの奇跡 /高画質・高コメント・60fps【ニコニコ動画】 - YouTube
「背水の逆転劇」(2000万回以上再生されている)
ストリートファイター Ⅲ ウメハラ神の逆転劇&手放し戦法 - YouTube
を観てみてほしい。
観てもらえればウメハラ氏のスゴさ・魅力が分かることと思う。
とにかく、ひとことで言って「凄すぎる」ゲーム動画で感動できるなんて思わなかった。
もはや控えめに言っても、格闘ゲーム界の神と言っても過言ではない存在だ。
ちょっとテンションが上がって前置きが長くなってしまったので、そろそろ書評を・・・
書評
ビジネスマンが描いた成功法則などの書籍は内容が似てしまう部分が多い。
それらに比べ、同じく成功者ではあるものの一風違った視点で語られていることが多いという印象だった。
14歳の時から勝ち続けてきた彼は、一度ゲームの世界を離れ、介護職員やプロ雀士になっている。
そして、2009年にゲームの世界に戻り、プロゲーマーになっている。
そういった一般のビジネスマンとは違った道を歩んできた梅原氏だからこそ語れる内容が多いのだと感じた。
梅原氏は勝負の世界で勝ち続けるためには、運・要領だけではなく、それなりのやり方が必要になるという。
【昨日より今日、今日より明日、ひとつずつでいいので、変わり続けること。大きな成果や成長であっても、煎じ詰めればそれは小さな小さな一つの成長の集合と言えます。】
よく、目標を作りましょう、ハードルは低すぎず高すぎずギリギリ超えられるものにしましょう。
そういったことがビジネス書には書いてある。
ところが、ウメハラ氏の考え方はこういったよくある考え方とは一線を画している。
逆にハードルは低い方が良い。
そして、低くてもいいから小さなことでもいいから、毎日成長していくことが大事だという。
今までたくさんのビジネス書を読んできた僕にとって、真逆に近い内容のため懐疑的に思う部分もあった。
ところが、本書を読み終えてみると、その方がいいと感じられるようになった。
ウメハラ氏の考え方を取り入れることができれば、継続して何かに取り組むことも難しくなくなるだろう。
これがアマチュアとプロの差なのだなと感じた。
本書は、一般的なビジネス書に比べ非常に読みやすい文章になっている。
ウメハラ氏を知らない方や、ゲームに興味がない方だとしても本書は読み物として面白い。
ハッキリ言って、プロアスリートのように熱く語っているという感じではない。
けれど、内に秘められた熱意やエネルギーというものが伝わってくる内容だった。
印象に残った部分・感想
①本気で勝ちたければ、こだわりを捨てろ
ウメハラ氏は、自身のやり方に自信があり、これで間違いないと思いこんでやっていた時期は勝てなかったそうだ。
逆に個性や思い込みを捨て、人の意見を聞くようにしたところ、思いもしなかった考えがたくさん出てくる。
そして、世界がどんどんクリアになり、努力すべき方向性が見えるようになってくるのだという。
【本気で成長したい、強くなりたいと思わないと、自分の思い込みはなかなか捨てられない】
【妙なこだわりにしがみついていられる間は、それほど本気ではない可能性がある。「いやいや俺は本気だよ」というのであれば、その本気も疑ってみるといい。それだって思い込みかもしれないのだから】
本気で何かに取り組んでいる。そう思っているとしても、結果がついてこない。
妙なこだわりや思い込みがあるために見えなくなっている部分があるのなら、本気とは言えない。
厳しい意見にも思えるが、すごく納得させられた。
②感情的にならない
感情的になって、いいことなどない。勝負の世界に限らず、そう思っている。
ゲームの対戦中において、劣勢になると感情的になるプレイヤーがとても多いという。
焦りの感情に押されると、どんどん視野が狭くなり、見えていたものが見えなくなったり、気づけたものに気づけなかったりすることが問題だ。
そんな時は、態勢を整えるために一歩引くことが良いという。
【態勢を引いて、広い視野で状況をみられるようにする。パニックになっていた感情が、だんだん落ちついてくる。その後のことは、それから考えればいい。】
ゲームにおいては、ダメージを受けるとしても、冷静になるために必要ならばそれを受ける場合もあるという。
実生活においても、焦ってイイことなど何もないと感じることがある。
焦って仕事をしたばかりに、仕事の質が落ち、結果的に余計に時間がかかったなんて経験が誰しもあるのではないだろうか。
1秒以内の気の緩みで勝敗が決する世界で勝ち続けるウメハラ氏の言葉には説得力がある。
一時、時間が消費されると感じたとしても、一歩引いて態勢を整える重要性が伺える内容だ。
③1日1つだけ成長をメモする
1日に何時間も同じゲームをプレイするのだから、当然飽きてしまうこともあるだろう。
いったい、どのようにしてモチベーションを保っているのだろうか。
ウメハラ氏のモチベーションは成長を実感できることからくるという。
成長を実感することで、喜びや楽しさを感じ、練習することができ、成果につながる。この繰り返しが成長のループになるのだ。
【外からはなかなか評価されない、評価してもらえない内的な成長を、どれだけ意識できるかで、モチベーションは大きく変わってくる。】
ウメハラ氏が実際に行っている方法
新しい発見を毎日メモして、成長を確認するというものだ。
これは1日を思い返してみて、何か気づいたことはないかと問いかけ、思いついたことをメモする。
大きなことを探すより、小さなことの方が大切。
小さな気づきを見逃さずに意識できるようにすることが、成長に対する感受性を上げることになる。
【大切なのはハードルを下げること。僕がやっているメモを例にとると「1日1個」という成果を自分の中でルールを決める。1日1個であれば続けやすい。】
【ハードルを下げろというと、「こんな低いハードルを越えても結局自己満足だし、誰も評価してくれないから自信なんて持てないよ」という人もいるだろう。中略・・・周囲の環境がどうであれ、たとえわずかでも昨日の自分より前進があるのなら、その事実を肯定することをためらう理由はないように思う】
まとめのひとこと
僕自身、ついついハードルを高く設定してしまうクセがある。
できないかもしれないギリギリのところを設定した時に、それができると嬉しいからだ。
ところが、予定通りにコトが進まずハードルを越えられなかったとき、挫折感を味わうことになる。
そうなるくらいなら、そもそも小さなハードルを設定して、一つ一つ確実に成長を実感できる方が良いと感じた。
大きな成果というものは小さな成果を積み重ねた結果得られるものだ。
いきなり大きな成果を目指すことでやるべきことを見失うくらいなら、小さな成果を積み重ねて大きな成果に向かっていくようにしたい。
日々、自分自身の成長をみつめ、積み重ねていくことが結果に結び付く。
非常に合理的な考えだといえる。
世界で勝ち続けるBEAST ウメハラ氏の凄さがわかる書籍であった。