書評 グレー企業になりなさい【2015】
※本書は、どこかの辞職した政治家のように法律スレスレで「限りなく黒に近いグレー」な運営をしていこう!といった内容ではありません。
近年、ブラック企業という言葉がよく聞かれるようになりました。
就業規則違反や、過酷な労働により大手の居酒屋チェーンで従業員が過労死してしまっていたり、残業代が未払いだったりという話が後を絶ちません。
そんな中「グレー企業」という面白いフレーズに惹かれ、ポチッとせずにいられなくなったので経営者でもないのに読んでみました。
著者情報
長尾雅昭さん。特定社会保険労務士・税理士資格を持つ。日本大学経済学部にて授業も担当されている。
書評
本書は、著者が30年にわたり中小企業の経営者への指導をしてきたキャリアを活かした「強い中小企業づくり」のための指南書となっている。
★本書は、どこかの辞職した政治家のように法律スレスレで「限りなく黒に近いグレー」な運営をしていこう!といった内容ではありません。
むしろ「白と黒の間のグレー」で健全に運営していこう!といった感じです。微妙なニュアンスの違いですが、重要なことです。
本書の定めるグレー企業とは
【大手企業のように万全の待遇はないけれど、法律に定められた最低限の待遇は確保する。会社が健全に経営できる範囲で、社員の立場を尊重する】という方向性の企業のこと。
本書を読むことで分かること
上記を柱として、よく聞く有給や残業代のトラブルや、問題社員との付き合い方、就業規則の重要性が非常に分かりやすくまとめられていました。
以下に私が印象的だった部分と、感想をまとめます( ・`ω・´)
印象的だった部分
①中小企業がホワイト企業になるのは困難
ブラック企業と呼ばれないために、大企業並に至れり尽くせりにする。つまりホワイト企業を目指すと、当然、経営がひっ迫してしまう。
ならば法律違反をしない範囲で、社長自身が追い込まれないよう施策をして社員と良好な関係を築けるような方法をとりましょうということですね。
そうならないために、理想的なホワイト企業ほどは目指せないにしても社印も納得できるレベルの労働条件を整えることが重要。
社長だけが安心・安全な会社では、社員の不満が爆発したり、ブラックだ!なんて言われるかもしれませんからね。
②就業規則はグレー企業の切り札
本書を読んでみると、中小企業がうまくグレー企業として成功するためには就業規則の規定が非常に重要であることが分かります。
ここがしっかりしていれば、トラブルは防げますが、曖昧だと訴えられたり予想外の痛手を受けることになりかねないと感じます。
そもそも就業規則は社員の働く環境を定めるものです。
【労働基準法で定められた「労働条件(必要記載事項)と、会社が定める社員が遵守すべき義務、すなわち「職場のルール」があります。】
必要記載事項には「絶対必要記載事項」と「相対必要記載事項」がある。
【「絶対必要記載事項」とは、必ず就業規則に定めなければならない規則です。始業及び終業時刻、休憩時間、休日、休暇、賃金に関する事項、退職に関する事項(解雇の事由を含む)などがこれにあたります】
【「相対必要記載事項」とは定める場合は記載しなければならない事項、すなわち載せるか載せないかを社長が判断できるものです。退職手当、臨時の賃金、安全及び衛生、職業訓練、災害補償、表彰及び制裁に関する事項などがこれにあたります。】
ちょっと難しいですが、まとめると、社長の意思で「退職金なし」「忌引休暇なし」「育休中は無給」などと定めても問題ないということですね。
労働基準法に違反しない範囲であれば、決められる職場ルールは、こんなに自由が利くのですね。これは衝撃でした。
こんな方にオススメ
これから会社を経営する方も、既に経営している方も一読の価値がある内容だと思います。
というより、読んでおいた方が良いと思います本当に。
社労士の方が書いてあるだけあって、ものすごく説得力がありました。
今の時代は、ネットで簡単に色々なことが調べられます。
問題社員にメチャクチャな主張で訴訟を起こされることもあると聞きます。そんなトラブルを避けるためにも、本書はかなり役立つ書籍です!
まとめのひとこと
私にとって、社会保険労務士さんは馴染みがない職業でしたが、経営者の方にとってかなり頼もしい存在なのだと思います。
法律や過去の実例に沿って、具体的なアドバイスをしてもらった方が健全な会社運営ができますし、会社経営で悩んだ際に相談されると良さそうです。
健全なグレー企業を目指し、社長も社員も納得して働ける会社が増えると理想的ですね。全然社長になる予定はありませんが、それでも面白い本でした!
「グレー企業」になりなさい! 中小企業が生き残るための「究極の経営戦略」
長尾 雅昭 現代書林 2015-01-15
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