【書評】こんな僕でも社長になれた 家入一真 著
以前、読んだ堀江貴文氏の書籍で紹介されていた書籍を読んでみた。
大変、失礼な表現で恐縮だが、なんでも器用にこなす男が順風満帆に会社を立ちあげ、成功していくサクセスストーリー!ではない。
ハッキリ言うと「どん底からの這い上がった社長のサクセスストーリー」がしっくりくる内容だ。
僕は、社長というのは元から頭の良い天才型か秀才型の選ばれし者がやっているのだと思ってきた。
しかし、家入氏は、「もともと素質あったから」なんて一言で言えないほど、困難な道を歩んでこられたことが分かる。
今でこそ社長となっている家入氏だが、裕福とは言えない家で育ち、あることをきっかけに登校拒否になってしまう。
高校を中退し、押し入れでの引きこもり生活を3年もしていたというのだから驚きだ。
身近にも、引きこもりになった方がいたが、そこから脱出することは周囲が思っている以上に難しいといえる。
本書は、家入氏の生い立ちから社長に至るまでを振り返りながら進んでいく形になっている。
家族との関係性や自身の辛かった体験などが赤裸々に語られているのが特徴だ。
学校生活に適応できず勉学に励み、高校で心機一転を図ろうとするも、やはりうまくいかず、結果的に不登校から引きこもりになってしまう。
頑張っても頑張ってもうまくいかない。こういった内容が実に人間味があって、圧倒的にリアルだ。
人間、ふとしたことでここまで人生が変わってしまうのだなと思った。
学校という社会でうまく適応できなかった家入氏。
3年も引きこもりを続けたら、なかなか抜け出すことは難しい。
まして、引きこもりになった原因が人間関係なのだから。
「いろいろな物事から逃げてきた」と言ってはいるが、腐らずに前を向いて歩みだせるだけの精神力を持っていたことが大きかったといえる。
そんな著者の描くサクセスストーリーは、決して華やかなものとは言えない。
頑張っていく中で良い仲間と巡り合い、悩みながら壁を越えていく。そんな様が描かれているのだ。
妙に面白く仕立てている感じもなく、とにかくリアルというところが特徴だ。
だからこそ純粋に共感できるところも多く、感動できるのだろう。
家入氏の飾らない人柄、現実との向き合い方が人間的魅力を感じさせる内容になっている。
引きこもり・コミュ障だった著者でも社長になれた。そんな謙虚な家入氏の自伝だからこそ、勇気をもらえる内容になっている。
まったくイヤミのない文章で読みやすく、読み物としても面白い良書だった。
新装版 こんな僕でも社長になれた
家入一真 イースト・プレス 2012-08-31
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