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書評 「相方は、統合失調症」 芸人コンビ、松本ハウスの書籍
本作は「統合失調症がやってきた」の続編にあたります。
芸人コンビ松本ハウス
1991年に結成されたコンビであり、ボケの「ハウス加賀谷」、ツッコミの「松本キック」で構成。
タモリのボキャブラ天国や、電波少年などテレビで引っ張りダコだったことを覚えている方も多いのではないでしょうか。
加賀谷さんの病気療養のため1999年に活動を休止したが、2009年には活動を再開。病気を抱えての再スタートは、お笑い芸人として、ただコンビを再結成し活動していく芸人とはわけが違う。
加賀谷さん自身の苦しみも、松本キックさんの苦しみも、かなり細かく心情が読み取れる内容であり、そこにある病気持ちならではの大変さなどが非常にリアルに描かれている。
病気自体が大変だったこともあり、お笑い芸人としての再スタートが困難の連続であったことは想像に難くない。
本書は、ものすごく重いテーマに触れている。しかし、笑いにつなげていたり、明るい表現に変えるたりすることで読み手の気持ちが暗くならないよう配慮されているところは、さすが芸人だなと言える。
お二人は、芸人として再スタートを切ってから、全国各地で統合失調症の理解を呼びかける講演も積極的に行っている。
松本キックさんは、当初は講演を断り続けていた。自分たちの足元が固まっていないのに誰かに語るなど分不相応だと考えていたからだそうです。
実際に、講演会をしてみたところ、様々な立場の方から統合失調症に関する情報を得ることで、より相方を知ることもでき、当事者の心に触れることができたという。
本書の終盤で松本キックさんは、こう語っていた。
【統合失調症と言うだけで、世間から偏見の目で見られてしまうが、当事者やご家族には優しい人、温かい人、マジメな人が多いということがよく分かった。みんなが笑って過ごせるよう、みんなの代弁者として、発信できるところでは発言していこう。俺も触れている者の一人なのだから】
統合失調症について
書評なので、統合失調症がどういうものかという説明は他のサイトにお任せしますが、
統合失調症について説明しているサイトを見るよりもリアルな現実を知ることができる漫画をご紹介したいと思います。
ブラックジャックによろしく(精神科編は9巻と10巻)
この漫画は医療現場で起きていることを非常にリアルに描いている、ものすごく考えさせられる漫画です。僕の友人が精神科で勤めていますが、ほぼ精神科そのものだと言っていました。
統合失調症の症状から、患者の精神状態がすごく分かりやすく描かれているので、オススメです。よろしければ読んでみてくださいね。ブックオフなら大体100円で買えます。
感想
本書を読んでみて感じたことは、病気を抱えながらも見事に芸人として再スタートされたハウス加賀谷さんは素直にスゴいと感じました。
統合失調症は、原因はハッキリしていませんが、ストレスによって症状が悪化してしまうと言われています。そういった状態で、芸人という職業は、あまりに厳しいと考えます。
なんせ、笑いをとらなければならないというプレッシャーは計り知れません。それをストレスと考えると、尋常ではないでしょう。
特に再スタートした芸人ともなると、売れている芸人が少しスベるのとはワケが違います。スベること、もしくは上手に漫才ができないこと、それは仕事を失うことに繋がり、芸人生命を左右する出来事に成りうるからです。
10年のブランクがあり、病気の症状を抱えていながらも、頑張り続けてこられたところは、尊敬に値します。
本書を読んで思うことは、病気になったハウス加賀谷さん自身の頑張りはモチロンですが、相方の松本キックさんのサポートが相当に大きいことが分かります。
実は、コンビ結成前からハウスさんは統合失調症の症状があり、薬を飲んでいました。それを知っていながら受け入れ、コンビを組んでいたのです。
正直、相方の松本キックさんがいなかったら、ここまで症状とうまく付きって芸人として再スタートするのは不可能だっただろうなと感じます。
統合失調症は身体症状のみの疾患と違い、精神症状が中心になります。それゆえに、周りのサポートが相当に重要だと思わされる内容が赤裸々に綴られていました。
加賀谷さん自身はこう語っていました。
【変に気をつかわれないっていうのは、すごく楽にいられるんですね。でもそれって、なかなかできることじゃないと思うんです。で、なんでキックさんはできるのかなと僕なりに考えたら、出たんです。答えが。この人・・・・天然なんです】
松本キック【お前が言うな!】
ステキな掛け合いですね。
結婚をし、人生を一生ともにすると誓ったはずの夫婦ですら、一方が病気になったことで離婚するなんてことも珍しくありません。
そんな中、松本ハウスさんは、決して加賀谷さんを見捨てなかった。そんなことは一切考えなかったそうです。
また、出会った当初から、「病人だから」という接し方を一切しないでいるところが素晴らしい。活動休止後も、再開後も一貫して接し方は変えていないのがよく分かります。ハウス加賀谷さんにとって、松本キックさんは「相方」という枠を越え、もはや「良き妻」ではないでしょうか。本当の意味で最高のパートナーですね。
統合失調症を理解する方が増え、サポートできる方が増えることで、人生を好転させていける方も大勢出てくることだろうと感じます。
病気を抱えた本人は、薬の副作用もあり、落ち込みやすかったり自分を必要以上に責めてしまったりすることがある。そんな時、誰かに頼る、甘えるということは非常に大事なことだと感じさせられました。
自分自身では、まったく認識も対処もできないようなことでも、サポートしてくれる誰かが一つ気づけば、一つ対処ができる。そんな地道な作業を繰り返しながら自分なりの生き方・スタイルが見つかっていく。自分ができることが増えていく。
そういった松本キックさんの関わりがあったからこそ、自分を責め、苦しみ続け、一時は自殺しそうになっていた加賀谷さんも、変わっていけたのだと思います。終盤に出てきたハウス加賀谷さんの言葉が印象的でした。
【ようやく、今の自分でいいと思えるようになってきました】
この言葉が全てを物語っていますよね。
彼は、自身の現状を受け入れ、新しい自分に価値を見出すことができたから自信をもって生きることができているのだと思う。
誰かにサポートしてもらうことが、どれほどの力を持っているか、本書を読み進めると実感できました。
さいごにひとこと
こういっては非常に失礼なんですが、芸人さんなのに文章を書くのが上手く、非常に読みやすくて驚きました。
こういった病気をテーマにした本は重くなりがちですが、イラストも使わず、写真でごまかしたりすることもなく、無理に前向きなことばかり書くわけでもなく。
それでいて、統合失調症というものが理解しやすいようリアルに、かつ軽快に綴っているところは芸人の成せる技なのだなと感じた。
松本ハウスのことも、統合失調症のことを全然知らない方でも分かりやすく、面白いと思える内容になっています。
今後も、統合失調症の世間での理解度が高まること、お二人のご活躍に期待が高まる良書でした。オススメです。
ハウス松本のコントを観て
YOUTUBEにて久しぶりに松本ハウスのボキャブラ天国時代のネタを観た後、現在のネタを観てみました。
ずばり統合失調症コントという形で色々なシチュエーションのコントを展開されていました。
書籍の中では、加賀谷さんがボケる際に妙な間ができてしまい、ウケなくなる等の問題があったと書かれていました。
僕が見た限りでは、しっかりお笑いのコントとして違和感なく出来上がってたことと、番組内で司会の方とちゃんと「ふざけたやり取り」もされていたので、違和感はありませんでした。
ご自身の体験を交えた「コント」により、統合失調症の理解を分かりやすく伝えること、お笑い芸人として復帰することの両方を達成されているところは素晴らしいことだと感じました。
松本ハウスのお二人のご活躍に期待ですね